この国の病根について
− 「自由な報道」と「報道の自由」 −
東寺真言宗 91次宗議会 松下隆洪議長挨拶 平成23年6月15日

  3.11の東北大地震ではおそらく数万人が死亡し、福島原発はいまだに収束もせず、解決のめどもまったく見えていません。

 日本人の誰しも思うのは、なぜ日本はこんなひどい国になってしまったのだろうかということだと思います。私もその一人で、毎日、自問自答しています。いったいどうしてこの国は、こんな有様になってしまったのでしょうか。

 この現状に、とてつもなく責任があるのが、日本のマスコミではないかと思います。「自由な報道」と、「報道の自由」についてあまりにも無頓着だったということです。

 たしかにこの国では、朝になれば新聞が届き、深夜でもテレビは放送され、おびただしいメディアが何かの情報を流しています。しかしこれは「自由な報道」であっても「報道の自由」ではありません。「報道の自由」とは権力を批判し、チェックする機能を担保した報道をいうのであって、記者クラブ制度という既得権益に守られ、政府発表を無批判に垂れ流す日本の巨大マスコミに「報道の自由」はないのではないかと思います。その良い例が福島原発のメルトダウンです。地震発生直後にはすでに原発は爆発、メルトダウンしていたにもかかわらず巨大マスコミは「安全です、安全です」という政府発表を、ただ垂れ流していたばかりでした。

 たしかにこれも「自由な報道」ではありましょうが、「報道の自由」とはほど遠いものです。大東亜戦争における「勝った、勝った」報道と同じではないでしょうか。

 福島原発がいまだに解決のめどさえたたないこの国の病根の一つが、確かにここにあるのは厳然たる事実です。日本人はそろそろ覚醒すべきです。