− 隠岐島と竹島と東日本大地震被災地 −


 宝善院が所属する東寺真言宗には、隠岐島に数ヶ寺の末寺がある。毎年、支所交流が全国規模で開催され、今年は隠岐島が交流場所となり筆者も初めて同地を訪ねた。今話題の「竹島」は「島根県隠岐島町」に所属する。

 また秋には東日本大地震の被災地を訪ねることができ、石巻市大川小学校の跡地ではささやかながら子供たちの供養をすることもできた。


   
  港に立つ竹島アピール
しかし、設置数は少ない・・・
大川小学校の供養碑  


 隠岐島は6月中旬初めて訪れたが、有り余る自然と日本海の海の幸、島の台地に自然に放牧されている隠岐牛のすばらしさと、牧場から見晴らす日本海の景観は、いずれも感動ものであった。

 新幹線で小田原駅から新大阪まで3時間、新大阪駅前からバスで伊丹空港まで30分、伊丹空港からプロペラ機で40分の小旅行である。

 後醍醐天皇ゆかりの島には数多くの歴史的遺産が残されており、島名物の牛相撲とともに多くの観光資源が残された屈指の観光地だと思うが、観光客はそれほどでもないらしい。

 その一番の原因は東京での観光アピールの徹底的少なさと、東京・羽田からの直行便がないからだろう。これは直感だと思う。なんでこんなすばらしい島に東京人は来ないのだろうかというより、東京人は知らされていないのではと思った。沖縄のニュースは毎日のようにTVに出るが、隠岐島のニュースが東京で流されるなんて、一年に一度くらいの感覚しかない。だから東京人は隠岐島の魅力どころか、おそらく島の位置さえ知らないというのが本当のところではないのか。こんなすばらしい島を知らない東京人はえらい損だという感想。



隠岐は島全体が博物館のよう 隠岐牛の背の向こうに日本海が見える 島名物「牛相撲」、
後醍醐天皇もご覧になったという


 竹島は隠岐島の中の一つの島に当るが、現在は韓国に占領されており、中国が領有権を主張し始めた尖閣列島とともに毎日ニュースに出ている。心配なのは竹島が所属する隠岐本島まで、このままでは人口減少により韓国の鎧下(がいか・よろいの下)に入ってしまうのではないかという心配だ。

 島に3日間滞在したが、過疎化は相当なスピードで進んでいるのではないか。3日間で見かけた生徒は小中学生3人。朝、ホテルの周りを散歩すると3軒に1軒は空き家。夕方になって電燈が見える家は5軒に1軒。見かける島民のほとんどが70代以上のような感じで、このまま過疎化が進めば、隠岐本島まで韓国のターゲットになってしまうのではないかとさえ思えた。

 隠岐島を防衛する最良の方法がある。それは現在の伊丹便の他に、羽田からの直行便を飛ばすことだ。日本海の美味と隠岐牛ステーキ、後醍醐天皇にさかのぼるいたるところに散在する豊かな島の歴史。東京・神奈川・千葉・埼玉の3500万にのぼる東京圏人口と隠岐を直行便で結ぶことだ。

 観光客が増えれば地元の仕事も増えるし、子供たちも帰ってくる。まさに「防衛観光」だ。政府はしばらくの間、航空機の手当てさえ面倒見ればあとは民間でできる。震災復興予算のでたらめなばらまきにくらべれば、なんと効果的予算執行ではないか。



 東北地震被災地へは10月初旬出かけた。平塚を4時起きして新幹線で仙台に午前9時前に着いて知人の車で約350キロ。仙台を南北して被災地を案内していただいた。

 感想は、あれから一年半も経っているのにどこが震災復興されているのかほとんどわからなかった。被災地は瓦礫と夏草の森で、草の間に住宅の基礎らしきコンクリが見え隠れし、はるか遠くにユンボのアームが音もなく動いている。どこかで復興工事は行われているのだろうが、左を見ても右を見ても、夏草の森が遥か延々と続いているばかりだった。



   
  津波で流された陸前高田の町の跡 広がるばかりの野原と草原  


 陸前高田の津波被害地(道の駅付近、千昌夫のホテル、高校、消防署)南三陸町の海岸堤防跡、石巻市大川小学校跡から仙台市東の海岸地域の津波被害寺院を廻ったが、後片付けもままならぬまま、津波に破壊された建物が瓦礫とともに悄然と夏草の間に建っているという感じだった。


高田松原の道の駅・津波にて全壊 千昌夫の「ホテル1000」・津波にて全壊 ここで破壊された南三陸町の堤防

   
  高田高校の教室内部 高田高校の教室内部  


 津波被害を考えると同じ土地に市街地を復興できないというジレンマがあるのだろうが、それにしても一年半も過ぎているのにというのが感想だった。その上に福島原発の放射能被害が重なってはなんともならないということか。

 震災被害地の復興が遅れていることは国会でも問題になり、さらには復興予算が他府県の道路やスポーツ施設の補修に使われるなど、ほとんどでたらめ状況だ。被災地の現状を見ると、この国の国家の形について、なんともいわれぬ未来不安をぬぐえない、というのが現地での感想だった。


   
  住む人もなく建っている 津波跡地の住宅のかけら  


 「東京新聞」が次のように伝えている。

復興へ付け替え横行、復興予算に財源が付け替えられた主な事業
 ・ 外務省 21世紀東アジア青少年交流計画 72億円
 ・ 防衛省 航空機輸送機の取得など 400億円
 ・ 内閣府 地域自殺対策緊急強化基金 37億円
 ・ 文科省 国際熱核融合実験炉研究支援事業 42億円
(2012年10月17日 東京新聞朝刊) 

 震災復興予算が「付け替え」という役人用語で横領されているというべきだ。