− 東寺伝法学院 第九期生 卒業式祝辞 −
平成20年3月26日  宗議会 議長 松下隆洪


 東寺真言宗宗議会を代表して、一言お祝いを申し上げます。
 まずご参集のご父兄の方々には、今日までのご苦労を惻隠し、いかばかりのご心配を今日 まで重ねられてこられたか、ようやく御自坊に後継者ができた喜びをかみしめ、本日の慶事を心よりお祝い申し上げるしだいです。
 また卒院生においては、とりあえず真言宗の僧侶として、その第一歩のライセンスを取 られたことをお祝い申し上げます。
 さて卒院生の諸君は、これからご自分の歩む道をどのように予想されておられるでしょうか。 私は毎回の講義におきましてこれからの寺院は次の三種類だといろいろの事例をとりまぜて説明してまいりました。
 @は消滅型寺院、Aは自滅型寺院、Bは持続型寺院です。諸君らがいずれどこかの自坊の 住職となった時、諸君に求められる能力はどうしたら自坊をBの持続型寺院にすることが できるかということです。並大抵の努力程度ではこれからの時代を住職として自坊を運営 していくことはできないでしょう。日本の総人口の半減がすでに目前の時代になってきま した。五十年後、確実に日本人は半減します。大学、マンション、幼稚園、学校、道路すべて半分不要となり、全国七万五千カ寺の寺院も半分不要の時代がくるのです。諸君よりは多少人生を体験してきた私に言わせれば、諸君のこれからの困難は、諸君が予測する困難の十倍以上の困難がこれから待ち受けているでしょう。
 本堂でお経を読んでいれば何とかなった時代は終わりました。
 これから諸君は身の回りに起きることを最大限注意し、何をなし、何をなさざるべきかを熟考し行動しなくてはなりません。
 日本と世界は今、未曾有の混乱の中にあり、世界経済はひょっとすると世界恐慌になるかもしれない、あるいはすでに恐慌に突入したとさえいわれております。人類が体験した ことのない混乱の時代がはじまりつつあるといえます。
 現実に今から百数十年前の明治維新前後、たった数年の間に、日本全国で半分以上の寺院が消滅していきます。バブルがはじけて信じられないような巨大銀行でさえ消えていき ました。寺が消滅するなど些細なことです。われわれが直面している時代とはそういう時代だということを、もう一度再確認して、東寺の山門を背中に帰山してください。本日は おめでとうございます。