― 製 作 裏 話 ―
コンピュータと声明大全

 刊行会が当初いちばん気にかけましたのは、どうしたら低価格でこの発刊が出来るかという事でした。書籍とCDの製作経費はあらかじめ決まったものですので、人件費を削減するしかありません。通常この種の出版では、担当の女子事務員一名程度を雇用し編集雑務ならびに一般事務を行わせます。刊行会ではこの事務員を刊行会代表宅のコンピュータで賄いました。今回の製作にコンピュータがもしなかったら、製作経費、製作時間など大幅に増額したと思われます。申込会員の住所管理、経費管理・入金管理、発送管理は全てNEC PC9821-ASで管理しました。特に商品発送はそれぞれの製作現場から直送しましたので、宅急便の会社から事前にコンピュータ専用連続伝票を取り寄せて、住所印字をすませたものを工場に送り、発送してもらいました。
 というのも700部の宅急便伝票を手書きした場合、どうしても誤記を免れず、その為に生ずるトラブル処理の時間も結局は経費となりますし、手書きの費用もバカになりません。多分、コンピュータの導入で一般事務については、5年間で400万円程度の経費と人件費を削減できました。 「解説」本文の文字原稿についても、コンピュータは大いに役立ちました。
 いちばんやっかいな「解説」最終頁の曲目目次と五十音索引は、入力をTOSHIBA RUPO JW05HGの住所管理ソフトで入力しました。このソフトは住所管理用のソフトですが、多数項目入力、検索、五十音並びかえ等に便利でした。入力したデータはMS-DOSに変換しフロッピーで印刷会社に渡しましたので、この段階でも入力費用を大幅に削減し、価格を下げることが出来たわけです。
 その他の文字原稿などは、「一太郎」で入力、同様な方法を採りました。 「解説」の中の「声明口伝」では電算写植機が大活躍してくれました。活字部分と図版部分が同頁内にある印刷物は本来、大変厄介です。本書では「声明仮譜」が図版として認識され、「説明」が活字部分となります。
 電算写植機は同一頁の中で、活字の校正はもとより、図版の移動・拡大・縮小が自由に出来ますので、作業はかつての写植張り込み方式時代の、何百倍ものスピードで行えます。これもコンピュータの威力でした。今回の出版には、その他にもパソコンを徹底利用しましたが、比較的低価格で会員の皆様にお分け出来たのは、じつはパソコンのお陰でした。声明とパソコンはどうしても結び付きませんが、実は製作現場では、このような技術革新が進行しています。