− ぼた餅地蔵様 −

 現代人が考えると、お地蔵様の名前の由来は、「ぼた餅」をお供えするからだろうと簡単に考えます。でも本当は「ぼた餅」をお供えできないから「ぼた餅地蔵」と、お名前がついたのです。
 かつて砂糖は本当に貴重で、戦後の貧しい時代、甘いお菓子は憧れの時代がありました。ダイエット一番の今では考えられないことです。
 まして江戸時代以前のわが国では砂糖は薬屋さんが扱う貴重品でした。ですからお砂糖いっぱいの「ぼた餅」はそれこそ、「棚からぼた餅」でもおきないと食べられないものだったのです。
 娘たちは17・8でこの村に嫁にきます。貧しさゆえに赤子を失った娘たちは、おいそれと歩いてでは実家の村までも帰れません。電話もない時代、慰めてくれる母もいません。そんなときお地蔵様は、子供を亡くした若い娘にいつもやさしく微笑んでくれました。甘い甘い、おいしい、おいしい、ぼた餅を子供にも、お地蔵様にも食べてほしいけど無理でした。
 そこで申し訳ないけど、お名前だけ「ぼた餅」地蔵と呼びました。お地蔵様も、にっこり微笑んでくれました。
宝善院 ぼた餅地蔵様