− 東寺伝法学院 第八期生 入学式祝辞 −
平成18年4月11日  宗議会 議長 松下隆洪


 宗議会を代表して一言、ご挨拶を申し上げます。まずはご入学おめでとうございます。
 私の学院での講義は『現代宗教学』を担当します。講義の骨子は、お寺はこれからどうやって生き延びていくのかという角度から、毎年お話をしております。このような学院では異例の講義ですが、これからはどうしても必要な知識だからです。
 ご父兄みなさんには、そのように申し上げれば、現在のお寺を取り巻く諸問題を、いわば毎日体験されておられるわけですから、すぐにご理解いただけると存じます。しかし今日入学されたみなさんのご子弟は、どこまで最近のお寺を取り巻くいろいろな困難を、理解されておられるのでしょうか。ほとんど理解していないか、あるいはこの世で一番楽そうな職業と思って、入学志願をしているかもしれません。初めに申し上げますが、世の中はそんなに甘くないのであります。そのようなことを一年間、数回に分けてお話させていただこうと思っております。
 まず手始めに皆さんに一、二質問を致します。
 新入生の皆さんは、日本全国にお寺と称するものが、いくつあると思いますか。そんなことを考えたことがありましょうか。
 宗教法人として認可され、生きた寺として活動している寺は、全国に7万4千カ寺あります。
 質問その二は、それでは皆さんが老齢を迎える50年後、現在7万4千カ寺の寺のうち、いったい何カ寺がこの世に残っているでしょうか。私の答えは、残っている寺は、約3分の1程度ではないかと思います。3分の2は消滅していると思います。びっくりするかもしれませんが、これは空想の数字ではありません。
 事実、明治維新において、神奈川西部では維新以前、195カ寺の東寺系の寺がありましたが、残った寺は103カ寺でした。この事実と比率から言えることは、幕末から明治の数年間に大ざっぱに言って、日本中の寺の半分が消えてしまったということです。これから迎える混乱の時代を考えると、むしろ3分の1程度は残ると見る見方さえ、甘いくらいかもしれません。
 新入生の皆さんは、生き残り側になりたければ、これからの1年間、この東寺伝法学院において真剣勝負をすることです。
 以上です。