― これからの「刊行会会員便り」について ―
松下 隆洪

 日本に中国から伝えられた声明と、それを基に日本人により作曲された声明など、わが国仏教界に伝承されてきた声明についての音楽研究は、それなりに行われているといって良いと思います。
 しかし残念なことに中国でのこの種の研究は、今までの中国の国情からいって、ほとんど絶望的でした。
 しかし最近の改革開放政策により、アカデミックな方面に於ても宗教的な研究も行われてきつつあるように思います。今回お会いした中国側の研究者の態度にもそのような雰囲気が大いに感じられました。しかし、なにぶん長い間の外国との研究交流の途絶から、十分な資料も無く、特に声明などの仏教音楽については、研究発表の場さえないように思えました。特に中国側の研究者の論文を、日本で自由に翻訳・発表できる受け皿が日本側にできていないように思えます。いたしかたのないことなのですが。
 当刊行会ではしばらくの間、中国側研究者の論文を日本に発表する場になってあげたらどうかと思っております。いわば声明研究の隙間商品です。さすれば、この「会報」の紙価も多少はあがると思いますので。                                                        (松下)